孫の手
実家にもあった。
確か義実家でも見たことがある。
孫の手って買うものではなく、親くらいの年齢のお宅には、いつの間にやらリビングに存在していて、トイレにカレンダーとか、必要かどうかなんて考えたこともない物の1つで、今まで気に留めた事もない、長く生活を送っている家の象徴位にしか思っていなかったのだが。
数ヶ月前から左肩に痛みがあり、背中に手を回しにくくなった。
手で身体を洗うのだが、背中が洗いにくい。加えて、よりによって右肩甲骨辺りに一日中痒みを感じるようになった。左手を伸ばしてみるが、痛くて届かない。
ボールペンなどでちょこちょこ掻いていたが、物足りない。ガシガシ掻きたいっ。
あっ、孫の手。
初めて孫の手の存在意義を知った気がした。
いつの間にかあるものではなく、必要だからあったんだ。やっとわかった。
さて、孫の手ってどこに売っているのだろう。
とりあえず実家に打診。使っているところを見たことがないからだ。
だめだ。日常使いしてるらしい。
どこで買ったの?と聞いてみると、いつの間にかあったとのこと。
えっ⁉︎やっぱりいつの間にかあるものなの?
それが先日、たまたま寄った道の駅で、木の生活用品を扱った出店に遭遇した。
ぶらりと覗かせてもらうと、あっ!気になっていた、竹で作られた米研ぎ棒がある!どうしようかなーと考えながら見渡してみると、あっっ!!!孫の手があるっ!!
早歩きで近づいてみると、150円の値札がついた孫の手が山のようにある!! 宝の山だ!!
よく見ると500円とか800円の物も混じっている。
聞いてみると国産か否かで値段が違うとのこと。 形や色の好みは800円の物。
もしかしたら一生使うかもしれない。リビングでずっと一緒に過ごしていくかもしれない。
ならば思い切って800円の物かなぁと悩んでいると、お店の方から「掻くだけなんだから150円の物でいいんじゃない?掻き心地は変わらないし」と商売っ気なしの素敵なアドバイスを頂いた。
100円均一店にもありそうだなと思ったけれど、こんな風にお話しして手に入れたなぁといつか思い返すのも楽しいと考え、我が家に150円の孫の手がやってきた。
好みの紐に付け替えたりなんかして。
あっ。米研ぎ棒。すっかり忘れてた。