ハンガー

いつ「使ってもいい？」と聞いたのか、思い出せない。古道具よりオシャレと言われる様な物がいいと思っていた頃ではあったと思う。

今なら味があるなぁとか、いいと思える理由はいくつか見つかる。古道具屋さんを覗く事が楽しくなってきたからである。

その頃はきっと、物をすぐ捨てる母の目をかいくぐって、古い物がうちにあった事が面白いと思ったのだろう。

数年前、透明フクロウのあたりに小さく名前が書いてあるのを発見した。  

父の字だ。きっと独身の頃買って名前を書き、ただただ毎日使っていたのだろう。そしてなんの思入れもないけど、ただただ結婚してからもずっと使ってきたのだろう。更に私もただただなんとなく使ってきた。

父にはこのハンガーの全てをもう聞く事は出来ない。

今はただただ使う事はない。大事に使っている。

思いつきで譲ってもらってよかった。父の小さい薄い字を見つけてそう思った。